2025.02.06
建設現場や工場での荷役作業に欠かせない「玉掛け」。
クレーンを使って重量物を吊り上げる作業ですが、安全に行うには正しい知識と技術が必要です。
適切な用具の選択や正しい掛け方を理解しないと、重大な事故につながることも…。
本記事では、玉掛け作業の基本や資格、使用する用具の特徴を解説し、特に スリングベルトの選び方と活用法 に焦点を当てて紹介します。
安全かつ効率的な荷役作業を行うためのポイントを押さえましょう!
建設現場や工場などで重量物を運搬する際に欠かせない「玉掛け作業」。
クレーンやホイストを用いて荷を吊り上げるこの作業には、適切な吊り具の選定と正しい手順が求められます。
ここでは、玉掛けの基本的な役割や重要性、作業の流れについて詳しく解説します。
玉掛けは、クレーンなどの揚重機を使って重量物を持ち上げる際に、 吊り具を適切に取り付け、荷を安定させて安全に移動させる作業 のことを指します。
建設現場や工場など、さまざまな場面で必要とされ、作業の正確性が求められます。
この作業は、単に荷物を吊るすだけでなく、 バランスを取ること、荷を傷つけずに運ぶこと、そして作業者の安全を確保すること が重要なポイントです。
そのため、荷の形状や重量、材質に適した吊り具を選定し、適切に取り付ける技術が必要になります。
また、 玉掛け作業は「玉掛け技能講習」を受講し、修了証を取得した者が行う ことが義務付けられています。
これは、作業ミスによる落下事故を防ぐための法律であり、現場の安全を守るために重要なルールです。
玉掛けはクレーン作業の安全性と効率を左右する重要な工程です。
適切に行われないと荷のバランスが崩れ、クレーンの操作に支障をきたし、事故の原因になります。
例えば、荷の重心を考慮せずに吊るすと、荷が傾いたり、ワイヤーに過度な負荷がかかり、最悪の場合、落下事故につながることもあります。
安全な作業のためには、 荷の重心を正しく見極め、適切な吊り具を選ぶことが不可欠 です。
玉掛け作業は、以下の手順に沿って行われます。
正しい手順を守ることで、安全かつ効率的な荷役作業を実施することができます。
1.荷の重量・形状の確認
吊るす荷物の重量や形状を確認し、適切な吊り具を選択します。
ワイヤーロープ、チェーンスリング、スリングベルトなど、荷の特性に合わせた吊り具を使用することが重要です。
2.適切な吊り具の取り付け
荷のバランスを考慮し、吊り具を適切な位置に取り付けます。
吊り点が適切でないと荷が傾いたり、滑り落ちたりするリスクがあります。
3.試し吊りの実施
荷を持ち上げる前に、軽く浮かせて荷のバランスを確認します。
試し吊りを行うことで、不安定な状態を事前に察知し、調整を行うことができます。
4.吊り上げと運搬
クレーンオペレーターと連携しながら、安全な速度で吊り上げ、目的の位置まで荷を移動させます。
急な動作を避け、慎重に操作することが重要です。
5.荷の設置と吊り具の取り外し
荷を所定の位置に静かに降ろし、安定した状態であることを確認したうえで、吊り具を取り外します。
最後に吊り具の状態を点検し、次回の使用に備えます。
玉掛け作業の正しい流れを守ることで、安全かつ効率的な荷役を実現することができます。
玉掛け作業は、重量物の吊り上げを伴うため、正しい知識と技術が不可欠です。
そのため、労働安全衛生法に基づき、一定の資格を取得した者のみが作業を行えます。
ここでは、玉掛け技能講習の概要と、作業に必要な安全基準について詳しく解説します。
玉掛け作業を行うには、 「玉掛け技能講習」 を修了し、資格を取得する必要があります。
これは、クレーンで1トン以上の荷を扱う際に必須とされる資格で、労働安全衛生法によって義務付けられています。
講習では、荷のバランスの取り方や適切な吊り具の選び方、安全な作業手順について学び、実技試験も含まれます。
修了者には修了証が発行され、正式に玉掛け作業を担当できるようになります。
安全な現場を維持するためにも、適切な資格取得が不可欠です。
玉掛け作業では、 労働安全衛生法およびクレーン等安全規則 に基づいた安全基準が定められています。
例えば、 吊り具の事前点検 は義務付けられており、破損や摩耗が見られた場合は使用を禁止しなければなりません。
また、作業前には 吊り荷の重量確認 を行い、クレーンや吊り具の耐荷重を超えないよう管理することが重要です。
さらに、作業区域の立ち入り制限や合図の統一など、 作業者間の連携 も事故防止には欠かせません。
これらのルールを遵守することで、安全な玉掛け作業を実現できます。
玉掛け作業では、荷の形状や重量に応じて適切な吊り具を選ぶことが重要です。
一般的に使用される吊り具には、 ワイヤーロープ、チェーンスリング、スリングベルト などがあります。
それぞれ特性が異なり、用途に応じた使い分けが求められます。
以下では、これらの吊り具の特徴を詳しく解説します。
ワイヤーロープは、 高い耐久性と強度を持つ吊り具 であり、重量物の吊り上げに適しています。
鋼線を撚り合わせて作られているため、引張強度が高く、長期間の使用にも耐えられます。
しかし、使用を続けるうちに摩耗や折れが発生しやすく、定期的な点検と交換が必要です。
また、ワイヤーの端部処理を適切に行わないと、荷の安定性が損なわれることがあるため、注意が必要です。
鋭利なエッジがある場合には、保護カバーを使用すると安全性が向上します。
チェーンスリングは、 耐久性と柔軟性を兼ね備えた吊り具 であり、高温環境や厳しい作業条件下での使用に適しています。
ワイヤーロープよりも耐衝撃性が高く、摩耗にも強いため、頻繁に重量物を吊る現場で重宝されます。
また、長さの調整がしやすく、さまざまな荷に対応できる点もメリットです。
ただし、重量があるため、手作業での取り扱いには負担がかかることがあり、適切な管理が求められます。
スリングベルトは、 ナイロンやポリエステル製の柔軟な吊り具 で、ワイヤーロープやチェーンスリングと比べて軽量で取り扱いやすいのが特徴です。
また、荷に直接巻き付けて使用できるため、 傷つきやすい荷を吊る際にも適しています。
耐荷重や使用用途に応じた種類が豊富で、特に形状が不規則な荷を安定して吊るのに向いています。
ただし、 鋭利なエッジには弱いため、カバーを使用するなどの工夫が必要 です。
軽量で持ち運びしやすく、作業効率の向上にも貢献するため、多くの現場で利用されています。
スリングベルトには さまざまな種類と規格 があり、用途に応じた選び方が重要です。
ここでは、スリングベルトの素材や耐荷重、選び方のポイントを解説し、安全な作業のためのメンテナンス方法についても紹介します。
スリングベルトの主な素材には、 ナイロン、ポリエステル、アラミド繊維 などがあります。
ナイロン製は 伸縮性が高く、衝撃吸収に優れる ため、クッション性が求められる作業に適しています。
一方、ポリエステル製は 水や薬品に強く、屋外作業に最適 です。
アラミド繊維は、 耐熱性と耐久性に優れた高性能素材 で、高温環境や特殊な作業に適用されます。
使用環境や荷の特性に応じて、適切な素材を選択することが重要です。
スリングベルトの耐荷重は、 帯の幅や層の数によって異なります。
一般的に、 幅が広く層が厚いほど耐荷重が増す ため、重い荷を吊る際には適切な仕様を選ぶ必要があります。
また、 作業環境に合わせて適切な長さや形状を選定すること も大切です。
例えば、 荷を包むように吊るす場合は「エンドレス型」、フックに掛ける場合は「アイ型」 が適しています。
作業の安全性と効率を高めるために、用途に応じた適切なスリングベルトを選びましょう。
スリングベルトを安全に使用するためには、 定期的な点検と適切な保管が不可欠 です。
使用前には、 摩耗や破損がないかを確認し、劣化が見られた場合は交換 しましょう。
また、使用後は 直射日光や湿気を避け、適切な環境で保管 することが重要です。
特に、 油や化学物質が付着すると劣化が進むため、使用後は清掃を行いましょう。
適切なメンテナンスを行うことで、スリングベルトの耐久性を向上させ、安全な玉掛け作業を実現できます。
適切な吊り具の選択と正しい作業手順を守ることで、安全な玉掛け作業が可能になります。
特にスリングベルトは 軽量で取り扱いやすく、荷を傷つけにくい ため、多くの現場で活用されています。
用途に応じた最適な吊り具を選び、安全な作業を心がけましょう。